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第18回フローティング・ジャズ・フェスティバル

posted Posted:'00.11.30 (Thu)

ジミー・ヒース・キッズとして参加した愛川由香の船上ライブ・リポート
(JAZZ LIFE誌 2001年1月号掲載)

[スケジュール] 2000/10/27(金)〜11/6(月)

 このフローティング・ジャズ・フェスティバルは豪華客船として知られるクイーン・エリザベス2世号でマイアミからバミューダ、マデイラ(ポルトガル)に寄ってイギリスのサザンプトン港まで渡る、大西洋横断ジャズ・クルーズである。

 船内では6つのラウンジやクラブがあり、毎晩日替わりスケジュールでジャズの 演奏が行われる。
お客さんは1セット聴いたら次は隣のクラブへと移動して贅沢に楽しめる。
 中でも一番お客を集めたのはダイアン・シューア(vo)だ。この日はフォーマルディナーの日とあって(日によって服装がカジュアルからフォーマルまで指定)、正装した人々がハロウィーンにちなんで彼女が歌った「ビウィッチト」にうっとり聴き入っていた。


18thフローティングジャズフェスティバル エンターテイナー振りを発揮したのはロイ・ヘインズ(ds)。金ピカの上下に身を包んだ彼は、鬼才デビッド・キコスキ(p)、武蔵丸に似た面持ちのドウェイン・バーノ(b)らと共にエネルギッシュなプレイを披露。
ステージ中央にハイハットを持ちだし、聴衆と「アニバーサル・ソング」を大合唱した。恒例のピアノ・スペクタキュラー*では(参加ピアニストがソロで15分づつ演奏し、次のピアニストを紹介していくもの)、前述のキコスキとビル・シャーラップが光った(私はシャーラップの前に弾く順番になってしまったので彼に発音を確認すると、チャーラップではなくシャーラップだそうだ)。

 彼の「ラッシュ・ライフ」は圧巻。ピアノの音色、アレンジのセンスと文句なし。トリオでもピーター・ワシントン(b)を従えてスリリングな演奏を展開した。しかしこのシャーラップや、キコスキ、ワシントンらは船内のジムで実によく走りよく鍛える。なるほど彼等のエネルギーの源はここにあり。

 もうひとりジムでよく見かけたのはジョン・ヘンドリックス(vo)の愛娘アリア・ヘンドリックス。
彼女は父親譲りのスキャットもさることながらバラッドもうまい。客席で目を細めながら聴いていたお父さんも印象的だった。

 さてクルーズも佳境に入りイギリスに近ずいた頃、船長のアナウンスは「明日、海が荒れる模様。風力は9。」風力1から10のうち9と言えば大揺れだ。
パーシー・ヒース(b)が夫の篤人のところにやってきて「ベースをベーストランクにしまっとけ」と指示。ただでさえ船酔い気味の私は慌ててナースに強力な注射をおしりに打ってもらう(これがまた眠くなるのだ)。
 一夜明けてみると全然揺れてないではないか。天候が好転したらしい。一同ホっとする者もいればがっかりする者も(ナンデ?)。こうして朝もやが立ちこめるサザンプトン港に到着し、11日間のクルーズは無事終わった。

[あとがき]
 字数の関係で書き切れなかったことがいっぱいあったんだけど、私たち下っ端バンドに歌いに来てくれたダイアン・シューアとエッタ・ジョーンズのことは忘れられない。あのエッタが昨年亡くなった。とても悲しい。暖かい人でした。
 バネッサ・ルービン(vo)バンドのアル・ヤングはすっごいスイングするいいドラマーだった。日本人のかわいい奥様とご一緒でした。文中の*ピアノ・スペクタキュラーの話なんて船に乗るまで聞いてなくて「うそー」とあせって、練習するために船内のピアノをジェブ・パットン(ジミーヒース・カルテットの才能溢れる若手ピアニスト)と捜し回ったのも今となっては楽しい思い出だ。